「いつまでこの痛みが続くのだろう…」長引く肩の痛みに諦めを感じていませんか?本記事では、その痛みがなぜ長引くのか、姿勢や血行不良、筋肉の緊張といった原因を深掘りします。そして、東洋医学に基づく経絡やツボへのアプローチ、科学的根拠に裏打ちされた血行促進・鎮痛効果など、鍼灸が長引く肩の痛みに効果的な理由を詳しく解説。鍼灸治療の流れや安全性、ご自宅でできるセルフケア、再発予防策まで網羅的にご紹介し、あなたの長引く肩の痛みを鍼灸で解決へと導くヒントを提供します。
1. 長引く肩の痛み、その原因と背景を知る
肩の痛みが長引き、なかなか改善しないと感じている方は少なくありません。その痛みは、単一の原因ではなく、日常生活の習慣や身体内部の複雑な要因が絡み合って生じていることがほとんどです。ここでは、あなたの肩の痛みがなぜ長引くのか、その根本的な原因と、放置した場合に起こりうるリスクについて詳しく解説いたします。
1.1 なぜあなたの肩の痛みは長引くのか?考えられる原因
肩の痛みが慢性化する背景には、様々な要素が潜んでいます。日々の生活習慣が知らず知らずのうちに肩に負担をかけ続けているケースもあれば、身体の内部で起こっている変化が痛みを長引かせている場合もあります。ここでは、特に考えられる主な原因についてご紹介します。
1.1.1 日常生活に潜む要因(姿勢、デスクワーク、ストレスなど)
私たちの普段の生活は、肩の健康に大きな影響を与えています。特に、以下のような要因が肩の痛みを長引かせる原因となることがあります。
- 姿勢の悪さ:猫背や巻き肩、スマートフォンの見過ぎによるストレートネックなどは、首や肩に過度な負担をかけます。頭の重みを支える首や肩の筋肉が常に緊張し、血行不良を引き起こしやすくなります。
- 長時間のデスクワークや同じ姿勢:パソコン作業などで長時間同じ姿勢を続けると、肩や首の筋肉が硬直し、血流が悪くなります。特に集中していると、無意識に肩に力が入っていることも少なくありません。
- 精神的なストレス:ストレスを感じると、交感神経が優位になり、全身の筋肉が緊張しやすくなります。肩の筋肉も例外ではなく、精神的な緊張が慢性的な肩こりや痛みに繋がることがあります。
- 運動不足:適度な運動は血行を促進し、筋肉の柔軟性を保ちますが、運動不足になると筋肉が硬くなり、肩の動きが悪くなることがあります。
- 身体の冷え:冷えは血行不良を招き、筋肉の酸素供給を妨げます。これにより、肩の筋肉が硬くなり、痛みを悪化させる要因となります。
1.1.2 身体内部の要因(血行不良、筋肉の緊張、神経の問題など)
日常生活の要因だけでなく、身体の内部で起こる変化も肩の痛みの長期化に深く関わっています。これらの要因が複合的に作用し、痛みの悪循環を生み出すことがあります。
身体内部の要因 | 肩の痛みへの影響 |
---|---|
血行不良 | 筋肉への酸素や栄養の供給が滞り、老廃物が蓄積しやすくなります。これにより、筋肉の柔軟性が失われ、硬さや痛みが慢性化します。特に、肩甲骨周りの血流が悪いと、痛みが広範囲に及ぶことがあります。 |
筋肉の過度な緊張・硬直 | 使いすぎや疲労、姿勢の悪さなどにより、特定の筋肉が常に緊張し、硬くなってしまいます。この状態が続くと、筋肉の内部にトリガーポイントと呼ばれる痛みの引き金となるしこりが形成され、関連痛として肩に痛みを感じることがあります。 |
神経の問題 | 首の骨の歪みや筋肉の緊張によって神経が圧迫されると、肩や腕にしびれや痛みが放散することがあります。また、自律神経の乱れは、血行不良や筋肉の過緊張を引き起こし、痛みの感じ方にも影響を与えることがあります。 |
炎症の慢性化 | 急性的な炎症が適切に処置されず、微細な炎症が継続することで、組織の修復が遅れ、痛みが長引く原因となります。特に、腱や関節包の炎症は、慢性的な痛みに繋がりやすいです。 |
1.2 放置するとどうなる?長引く肩の痛みのリスク
「そのうち治るだろう」と長引く肩の痛みを放置してしまうと、様々なリスクが生じ、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。早期の対応が重要である理由を理解しましょう。
- 痛みの慢性化と悪化:一時的な痛みが放置されることで、神経が痛みに敏感になり、少しの刺激でも痛みを感じやすくなります。痛みの悪循環に陥り、改善がより困難になることがあります。
- 可動域の制限:肩の痛みが続くと、無意識に肩を動かさないようになり、肩関節の動きが悪くなります。これにより、腕を上げたり、後ろに回したりする動作が困難になり、着替えや家事など、日常生活のあらゆる場面で不便を感じるようになります。
- 二次的な症状の発生:肩の痛みをかばうことで、首や背中、腰など、他の部位にも負担がかかり、新たな痛みや不調を引き起こすことがあります。頭痛や眼精疲労、めまいなどを併発することもあります。
- 精神的な影響:慢性的な痛みは、睡眠の質の低下や集中力の低下、イライラ、気分の落ち込みなど、精神的な負担を増大させます。これにより、生活の質(QOL)が著しく低下してしまう可能性があります。
- 姿勢のさらなる悪化:痛みを避けるために不自然な姿勢をとるようになり、それがさらに身体の歪みを助長し、痛みの原因を深めてしまう悪循環に陥ることがあります。
2. 鍼灸が長引く肩の痛みに効果的な理由
長引く肩の痛みは、日常生活に大きな支障をきたし、精神的な負担も大きいものです。なぜ鍼灸がこのような慢性的な肩の痛みに効果を発揮するのか、その理由を東洋医学と現代医学、それぞれの視点から詳しくご説明いたします。
2.1 東洋医学から見た長引く肩の痛みと鍼灸のアプローチ
東洋医学では、身体は「気」「血」「水」という要素がバランスよく巡ることで健康が保たれていると考えます。長引く肩の痛みは、この気血水の巡りが滞ったり、特定の部位に偏りが生じたりすることで引き起こされると捉えられています。
鍼灸は、この滞りを改善し、全身のバランスを整えることで、肩の痛みの根本原因に働きかけます。単に痛い部分を治療するだけでなく、身体全体の調和を取り戻すことを目指すのが、東洋医学に基づく鍼灸のアプローチです。
2.1.1 経絡とツボへの刺激による全身調整
東洋医学には、身体の表面に存在する「経絡」というエネルギーの通り道があり、その経絡上に「ツボ(経穴)」と呼ばれる特定の反応点が存在すると考えられています。長引く肩の痛みは、肩周辺だけでなく、関連する経絡上の他の部位の不調が原因となっていることも少なくありません。
鍼灸では、この経絡やツボを刺激することで、滞った気血の流れを改善し、全身のバランスを調整します。肩の痛みに関連するツボはもちろんのこと、全身の調和を図るためのツボも組み合わせることで、肩への負担を軽減し、痛みを感じにくい身体へと導いていくのです。
2.1.2 自然治癒力を高める鍼灸の力
私たちの身体には、本来、病気や不調を自ら治そうとする「自然治癒力」が備わっています。長引く肩の痛みは、この自然治癒力が十分に働いていない状態とも言えます。
鍼灸の刺激は、この身体が持つ本来の回復力を引き出すことを促します。ツボへの適切な刺激は、身体の各機能がスムーズに働くように働きかけ、自己回復能力を高めることで、肩の痛みを内側から改善していく力をサポートします。結果として、痛みからの回復だけでなく、再発しにくい健やかな身体づくりにも繋がります。
2.2 科学的根拠に基づく鍼灸の作用
東洋医学的なアプローチに加え、現代の科学的な研究によっても、鍼灸が長引く肩の痛みに有効である理由が解明されつつあります。鍼灸は、身体の生理機能に直接働きかけることで、様々な効果をもたらすことが分かっています。
2.2.1 血行促進と炎症抑制効果
鍼刺激は、筋肉や血管に直接作用し、血行を促進する効果が期待できます。血流が改善されると、肩の筋肉に滞っていた老廃物や発痛物質が排出されやすくなり、新鮮な酸素や栄養が供給されやすくなります。これにより、筋肉の緊張が和らぎ、痛みが軽減されることにつながります。
また、鍼灸には炎症を抑制する作用も報告されています。肩の痛みが慢性化している場合、微細な炎症が持続していることがありますが、鍼灸は炎症性物質の産生を抑え、炎症反応を鎮静化させることで、痛みの緩和に貢献すると考えられています。
2.2.2 鎮痛効果と自律神経への影響
鍼灸は、身体が本来持っている鎮痛システムに働きかけることで、痛みを和らげる効果があります。鍼刺激が脳に伝わることで、エンドルフィンやセロトニンといった脳内鎮痛物質の分泌を促すことが分かっています。これらの物質は、痛みを感じにくくするだけでなく、気分を安定させる作用も持っています。
さらに、鍼灸は自律神経のバランスを整える効果も期待できます。長引く痛みは、交感神経を優位にし、身体を常に緊張状態に置くことがあります。鍼灸は、副交感神経の働きを活性化させ、リラックス効果をもたらすことで、筋肉の過緊張を緩和し、痛みの悪循環を断ち切る手助けをします。これにより、心身ともに穏やかな状態へと導かれ、痛みの軽減に繋がるのです。
視点 | 主な作用メカニズム | 長引く肩の痛みへの期待効果 |
---|---|---|
東洋医学的視点 | 経絡・ツボへの刺激による気血水の巡り改善、全身のバランス調整 | 身体本来の自然治癒力向上、根本的な体質改善、痛みの緩和 |
科学的視点 | 血行促進、炎症性物質の抑制、脳内鎮痛物質の分泌促進、自律神経の調整 | 筋肉の緊張緩和、痛みの軽減、リラックス効果、回復促進 |
3. 鍼灸による長引く肩の痛みへの具体的な施術
長引く肩の痛みは、日常生活に大きな影響を及ぼします。鍼灸治療では、患者様一人ひとりの状態を丁寧に把握し、その方に合わせた具体的な施術を行います。ここでは、鍼灸院での一般的な流れと、治療における安全性、そして起こりうる反応について詳しくご説明いたします。
3.1 鍼灸院での問診から施術までの流れ
鍼灸治療は、単に痛む箇所に鍼やお灸をするだけではありません。長引く肩の痛みの根本原因を探り、体全体のバランスを整えることを目指します。そのため、施術に入る前に丁寧な問診と東洋医学的な診断が行われます。
まず、問診では現在の肩の痛みの状態について詳しくお伺いします。いつから痛むのか、どのような時に痛みが増すのか、痛みの種類、過去の怪我や病歴、さらには日常生活での姿勢や仕事内容、ストレスの有無、睡眠の質、食生活といった、痛みに関連するあらゆる情報を共有していただきます。これは、痛みの背景にある生活習慣や体質的な要因を特定するために非常に重要です。
次に、東洋医学的な診断が行われます。これは、西洋医学的な検査とは異なり、脈を診る「脈診」、舌の状態を観察する「舌診」、お腹の状態を確認する「腹診」など、伝統的な診断方法を用いて、お客様の体の内部状態やエネルギーの流れ、体質的な偏りを見極めます。例えば、血行不良や内臓の不調が肩の痛みに影響していると判断されることもあります。この診断によって、長引く痛みの真の原因がどこにあるのか、東洋医学的な視点から個々の体質やバランスの乱れを詳細に見極めることができます。
診断に基づき、お客様の症状や体質に合わせた最適な施術計画が立てられ、詳しく説明されます。使用する鍼の種類や本数、お灸の有無、施術の頻度や期間の見通しなどが伝えられ、納得した上で施術へと進みます。
実際の施術では、お客様の症状や診断結果に応じて、肩や首周りだけでなく、手足や背中など、全身にある経絡上のツボに鍼やお灸を用いてアプローチします。鍼は髪の毛ほどの細さで、ツボに正確に刺激を与えます。お灸は温熱刺激により血行を促進し、筋肉の緊張を和らげます。必要に応じて、手技によるマッサージやストレッチが併用されることもあります。お客様の体の反応を見ながら、その都度施術内容を調整し、最も効果的なアプローチを追求します。
施術後は、お客様の体の状態や反応について説明が行われます。施術後のだるさや眠気は、体が回復に向かっているサインであることなどが伝えられます。また、自宅でできる簡単なセルフケアや、日常生活で気をつけるべきこと、次回の通院の目安など、今後のケアについても具体的なアドバイスが提供されます。
3.2 鍼灸治療は痛い?安全性と副作用について
鍼灸治療に対して、「痛いのではないか」という不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、鍼灸治療で使われる鍼は髪の毛ほどの非常に細いものが多く、注射針とは構造も太さも異なります。そのため、多くの方が想像するような強い痛みを感じることはほとんどありません。
鍼を刺す際に「チクッ」とした軽い刺激を感じることはありますが、これは一瞬のことで、その後は「ズーン」とした響きや、温かさ、重だるさといった感覚を感じることがあります。これは「得気(とっき)」と呼ばれるもので、ツボに鍼が適切に作用しているサインとされています。痛みの感じ方には個人差があり、敏感な方にはより細い鍼を使用するなど、施術者がお客様の反応を見ながら調整いたします。
鍼灸治療の安全性については、使い捨ての鍼を使用し、衛生管理を徹底していることから、感染症のリスクは極めて低いと言えます。施術者は、解剖学的な知識や専門的な技術を習得しており、安全に配慮しながら施術を行います。
鍼灸治療後に起こりうる反応として、以下のようなものがあります。これらは一時的なものであり、ほとんどの場合、心配はいりません。
反応の種類 | 主な内容 | 対処法 |
---|---|---|
だるさや眠気 | 施術後に体がリラックスし、血行が促進されたことで、一時的に体がだるくなったり、眠気を感じたりすることがあります。 | 無理せず体を休めるようにしてください。 |
内出血 | ごく稀に、鍼を抜いた後に小さな内出血が生じることがあります。これは毛細血管が傷つくことによるもので、数日から1週間程度で自然に消えます。 | 温めたり強く揉んだりせず、そのまま様子を見てください。 |
好転反応 | 症状が一時的に悪化したように感じたり、別の場所に痛みが出たりすることがあります。これは体が良い方向へ向かう過程で起こる一時的な反応とされています。 | 通常は数日で治まりますが、ご心配な場合は施術者にご相談ください。 |
これらの反応は、体が変化している過程で起こる自然なものです。もし施術後に何か気になることがあれば、遠慮なく施術者に相談してください。鍼灸治療は、お客様の体の状態を丁寧に観察し、安全に配慮しながら進められるものです。
4. 鍼灸と他の治療法を比較 長引く肩の痛みへのアプローチ
4.1 マッサージや整体との違いと鍼灸の強み
長引く肩の痛みに悩む多くの方が、マッサージや整体といった施術を試された経験があるかもしれません。これらの施術も肩の痛みを和らげる効果が期待できますが、鍼灸とは異なるアプローチや強みを持っています。それぞれの特徴を理解することで、ご自身の長引く肩の痛みに最適な方法を見つける手助けになるでしょう。
4.1.1 アプローチの違い
マッサージや整体は、主に身体の表面的な筋肉や骨格に働きかけることで、痛みや不調の改善を目指します。一方、鍼灸は、身体の内部にまでアプローチし、より深いレベルでの調整を行うことが可能です。
施術の種類 | 主なアプローチ | 得意な症状や状態 |
---|---|---|
マッサージ | 筋肉の表面的な揉みほぐし、血行促進、リラクゼーション | 筋肉の表層的なこり、疲労回復、ストレス緩和 |
整体 | 骨格の歪み調整、関節の可動域改善、姿勢の矯正 | 骨盤や背骨の歪み、姿勢不良からくる痛み、関節の動きの制限 |
鍼灸 | 経絡やツボへの刺激、深部の筋肉や神経へのアプローチ、全身のバランス調整 | 長引く痛み、原因不明の不調、自律神経の乱れ、自然治癒力の向上 |
4.1.2 期待できる効果の違い
マッサージは、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進することで、一時的な痛みの緩和やリフレッシュ効果が期待できます。整体は、身体の構造的な問題に焦点を当て、骨格の歪みを整えることで、姿勢の改善やそれに伴う痛みの軽減を目指します。
それに対し鍼灸は、経絡やツボへの刺激を通じて、全身の気の流れや血流を調整し、身体が本来持つ自然治癒力を高めることを重視します。これにより、痛みの原因となっている深部の筋肉の緊張や血行不良だけでなく、自律神経の乱れや内臓機能の不調といった、長引く肩の痛みの背景にある様々な要因に働きかけることが期待できます。
4.1.3 長引く肩の痛みへの適性
長引く肩の痛みの場合、単に筋肉がこっているだけでなく、血行不良、神経の圧迫、自律神経の乱れ、あるいは内臓の不調が関係していることも少なくありません。マッサージや整体は、これらの要因の一部にアプローチできますが、鍼灸はより広範囲な視点から身体を捉え、痛みの根本原因に多角的に働きかけることができます。
特に、検査では異常が見つからないのに痛みが続く場合や、ストレスや不眠といった精神的な要因が痛みを悪化させていると感じる場合、鍼灸は全身のバランスを整え、身体の内側から改善を促すことで、長引く肩の痛みの解決に貢献できる可能性があります。鍼灸は、痛みそのものを和らげるだけでなく、身体全体の調子を底上げし、痛みが再発しにくい状態へと導くことを目指します。
5. 自宅でできる長引く肩の痛みケアと予防策
長引く肩の痛みを改善し、再発を防ぐためには、鍼灸治療だけでなく、ご自宅での日々のケアや予防策を取り入れることが非常に重要です。鍼灸で得られた良い状態を維持し、痛みにくい体へと導くための具体的な方法をご紹介いたします。
5.1 日常生活で取り入れたいセルフケア
日々の習慣の中に、肩の痛みを和らげるための工夫を取り入れることで、症状の悪化を防ぎ、快適な毎日を送ることができます。無理なく続けられる簡単なことから始めてみましょう。
5.1.1 温めるケアで血行促進と筋肉の緩和を
肩の痛みが長引く場合、多くは血行不良や筋肉の緊張が関係しています。肩周りを温めることで、血行が促進され、こり固まった筋肉が緩みやすくなります。
- 入浴: 毎日湯船に浸かることで、全身の血行が良くなり、肩の筋肉もリラックスします。シャワーだけで済ませず、ゆっくりと湯船に浸かる時間を設けましょう。
- 蒸しタオルや温湿布: 肩に直接蒸しタオルを乗せたり、市販の温湿布を使用したりするのも効果的です。じんわりと温かさが伝わり、筋肉の緊張が和らぎます。
- カイロの活用: 冷えを感じやすい時期や外出時には、使い捨てカイロを肩甲骨の間や肩の付け根に貼ることで、冷えからくる痛みを軽減できます。ただし、低温やけどには注意し、就寝時は使用を控えましょう。
5.1.2 姿勢の見直しで肩への負担を軽減する
日常生活における姿勢は、肩の痛みに大きく影響します。特にデスクワークやスマートフォンの使用が多い方は、意識的に姿勢を改善することが大切です。
- デスクワーク時の姿勢: 椅子に深く腰掛け、背筋を伸ばし、モニターは目線と同じかやや下になるように調整しましょう。肘が90度になるように机の高さも調整し、肩に余計な力が入らないように心がけてください。
- スマートフォンの使用時: スマートフォンを見る際は、首を大きく傾けすぎず、できるだけ目線の高さに持ち上げるようにしましょう。長時間の使用は避け、こまめに休憩を挟んでください。
- 立つ・歩く時の姿勢: 肩の力を抜き、お腹を軽く引き締め、顎を引いてまっすぐ立つことを意識しましょう。歩く時も、猫背にならないよう、胸を張って軽やかに歩くことを心がけてください。
5.1.3 睡眠環境を整えて肩の回復を促す
睡眠中に肩に負担がかかっていると、痛みが長引く原因となります。寝具を見直すことで、睡眠の質を高め、肩の回復をサポートできます。
- 枕の高さ: 枕が高すぎると首や肩に負担がかかり、低すぎると頭が安定しません。寝た時に首から肩にかけてのラインが自然なカーブを描くような、ご自身に合った高さの枕を選びましょう。
- 寝返りのしやすさ: 寝返りは体圧を分散させ、血行を促進する重要な動きです。寝返りが打ちやすい、適度な硬さのマットレスを選ぶことも大切です。
5.1.4 ストレスケアで心身のリラックスを
ストレスは、無意識のうちに肩や首の筋肉を緊張させ、痛みを悪化させる要因となります。心身のリラックスを促すことも、肩の痛みケアには欠かせません。
- 深呼吸: ストレスを感じた時や、就寝前などに、ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、自律神経が整い、心身がリラックスします。
- 趣味やリラックスタイム: 好きな音楽を聴く、読書をする、アロマを焚くなど、ご自身が心からリラックスできる時間を持つようにしましょう。
5.2 肩の痛みを再発させないための予防ストレッチ
長引く肩の痛みを改善し、再発を防ぐためには、日々のストレッチで肩周りの柔軟性を保ち、血行を促進することが非常に効果的です。無理のない範囲で、毎日少しずつでも継続することが大切です。痛みを感じる場合はすぐに中止し、決して無理をしないでください。
5.2.1 肩甲骨はがしストレッチ
肩甲骨は肩の動きの要であり、ここが固まると肩の可動域が狭まり、痛みの原因となります。肩甲骨を意識的に動かすことで、肩周りの血行が促進され、筋肉の柔軟性が高まります。
- 腕回し: 両腕を大きく後ろ回し、前回しにそれぞれ10回程度回します。肩甲骨が動いていることを意識しながら、ゆっくりと大きく回しましょう。
- 肩甲骨寄せ: 姿勢を正し、両肘を90度に曲げて体の横に固定します。そのまま、肩甲骨を背骨に寄せるように意識しながら、ゆっくりと肘を後ろに引きます。5秒キープし、ゆっくり戻す動作を10回繰り返します。
5.2.2 首から肩へのストレッチ
首と肩は密接につながっており、首の筋肉の緊張が肩の痛みにつながることがよくあります。ゆっくりと首を動かし、周辺の筋肉を伸ばしましょう。
- 首の横倒し: 姿勢を正し、右手を頭の左側に添え、ゆっくりと頭を右に倒し、左の首筋を伸ばします。痛みを感じない範囲で20秒程度キープし、反対側も同様に行います。
- 首の前後屈: 顎をゆっくりと引き、首の後ろを伸ばします。次に、ゆっくりと顔を上に向けて、首の前側を伸ばします。それぞれ5秒キープし、5回程度繰り返します。
5.2.3 胸を開くストレッチ
猫背の姿勢は肩を内側に巻き込み、肩の痛みを悪化させる一因となります。胸を開くストレッチで、姿勢の改善と肩周りの解放を促しましょう。
- 壁を使った胸のストレッチ: 壁に片手をつき、体を少し前に傾けながら、胸の筋肉を伸ばします。肩の高さで腕を伸ばし、ゆっくりと体をひねるようにすると、より効果的です。20秒キープし、反対側も同様に行います。
- 背中合わせのストレッチ: 両手を背中で組み、手のひらを返して腕を伸ばします。そのままゆっくりと腕を上に持ち上げることで、胸が開き、肩甲骨周りも刺激されます。
5.2.4 ストレッチを行う上での大切なポイント
ストレッチは、ただ行うだけでなく、いくつかのポイントを押さえることで、より効果を高めることができます。
- 痛みを感じたら中止する: ストレッチ中に痛みを感じた場合は、無理をせずすぐに中止してください。痛みを我慢して続けると、かえって症状を悪化させる可能性があります。
- ゆっくりと呼吸を意識する: ストレッチ中は、深くゆっくりとした呼吸を心がけましょう。息を吐きながら筋肉を伸ばすと、よりリラックスして効果的にストレッチできます。
- 毎日継続する: 短時間でも構いませんので、毎日継続することが最も大切です。習慣にすることで、肩の柔軟性が保たれ、痛みの再発予防につながります。
- 入浴後など体が温まっている時に: 筋肉が温まっている時にストレッチを行うと、より効果的に伸ばすことができます。入浴後や軽い運動の後などに行うのがおすすめです。
これらのセルフケアやストレッチは、鍼灸治療の効果をさらに高め、長引く肩の痛みからの解放と再発予防に役立つものです。ご自身のペースで無理なく取り入れ、健やかな毎日を目指しましょう。
6. まとめ
長引く肩の痛みは、複雑な原因から諦めてしまいがちですが、鍼灸は有効な解決策となり得ます。鍼灸は、経絡やツボへのアプローチを通じて血行を促進し、筋肉の緊張を和らげ、体が本来持つ自然治癒力を高めることで、痛みの根本改善を目指します。科学的にも鎮痛効果や自律神経への好影響が示されており、つらい症状からの解放を促します。ご自宅でのセルフケアと組み合わせることで、より効果的な回復と再発予防が期待できます。何かお困りごとがありましたら、当院へお問い合わせください。

コメントを残す